建設業許可の誠実性の要件とは?該当しない人の具体例と対象範囲を行政書士が解説

「建設業許可の要件に『誠実性』とあるけれど、具体的に何を審査されるの?」「自分は真面目に仕事をしているから大丈夫だよね?」
建設業許可を取得するには、クリアすべき「5つの要件」があります。そのうちの1つが、今回解説する「誠実性の要件」です。
「誠実」という言葉の響きから、真面目にやっていれば問題ないだろうと軽く見られがちですが、法律上は明確な定義と、思っているより広い審査対象の範囲が定められています。ここを見落とすと、許可が下りない事態になることもあります。
この記事では、誠実性の要件の具体的な内容、要件を満たさないケース、実際の確認方法、そして社内の「誰が」審査の対象になるのかを、行政書士がわかりやすく解説します。
この記事の結論
誠実性の要件は「真面目にやっていれば自動的にクリア」というものではありません。過去5年以内の他業種での処分歴や、社長以外の役員・支配人・支店長の経歴まで広く審査されます。一方で、軽微な法令違反があっても、実害がなく誠意ある対応をしていれば、必ずしも要件を満たさないと判断されるわけではありません。
この記事の内容
そもそも「誠実性の要件」とは?なぜ必要なのか
建設業法では、誠実性の要件を「請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」と定めています(建設業法第7条第3号、特定建設業は第15条第1号)。
建設工事は、注文を受けてから完成・引き渡しまでの期間が長く、前払いなどお金のやり取りが先に発生することも多い業種です。だからこそ、お客様(施主や元請)を守るために、「最後まで責任をもって工事を完成させられる、信用できる業者かどうか」が許可の段階で厳しく問われます。
「不正な行為」「不誠実な行為」の具体的な意味
法律で問題とされる「不正な行為」と「不誠実な行為」は、それぞれ次のように区別されています。
用語の整理
- 不正な行為:請負契約の締結または履行の際における、詐欺・脅迫・横領など、法律に違反する行為
- 不誠実な行為:工事の内容・工期・天災等の不可抗力による損害の負担などについて、請負契約に違反する行為
「不正」は法律違反、「不誠実」は契約違反という整理です。どちらも、お客様との信頼関係を壊す行為として、許可の判断に大きく影響します。
誠実性の要件を満たさない具体例
「建設業で詐欺や契約違反をしたことはないから大丈夫」と思っていても、建設業以外の経歴が影響するケースがあります。
ケース1:他業種での免許取消処分から5年が経っていない
申請者が、建築士法や宅地建物取引業法などの規定により、不正または不誠実な行為を理由に免許等の取消処分を受け、その最終処分から5年を経過していない場合は、原則として誠実性の要件を満たさないものとして扱われます。建設業以外の周辺ビジネスで重い処分歴があると、「建設業でも同じことをするおそれがある」とみなされてしまうのです。
ケース2:暴力団等に関与している
暴力団の構成員である場合や、暴力団による実質的な経営上の支配を受けている場合も、誠実性を満たさない(および欠格要件にも該当する)と判断され、許可を取得することはできません。
誠実性はどうやって確認される?
財産的基礎の要件であれば「預金残高証明書」、専任技術者の要件であれば「資格証や実務経験証明書」のように、誠実性以外の要件には分かりやすい証明書があります。ところが、誠実性については、それ単体を直接裏付ける書面というものが存在しません。
そのため行政庁は、申請書やその添付書類の記載内容、そしてそれまでに判明している事実から、総合的に判断するという方法をとっています。具体的には、次のような書類が手がかりになります。
誠実性の判断材料になる主な書類
- 工事経歴書(どのような工事を、どの規模で行ってきたか)
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 経営業務管理責任者・専任技術者の経験を確認する書類(工事請負契約書等)
- 略歴書・調書等(役員等の経歴に関する書類)
つまり、工事経歴書や直前3年分の施工金額から工事の規模や実態を、契約書等の確認書類から請負契約書がきちんと作成されているか・内容が適切かを、略歴書や調書から役員等の経歴を、それぞれ確認した上で、「不正または不誠実な行為をするおそれが明らかか」を全体として見ているということです。
裁判例にみる誠実性の判断基準
誠実性の要件がどこまで厳しく見られるのかについて、参考になる裁判例があります(東京高裁平成21年12月17日判決)。
関連判例:「誠実性」要件に該当しない事実を看過したかどうかが争われた事例
- 事案の概要
- ある事業者が、知事許可を受けずに建築面積150平方メートルを超える工事を施工していました。この事業者に住宅の建設を注文した発注者が、後にトラブルが生じたとして、許可を出した県に対して損害賠償を求めた事案です。
- 争われた点
- 行政庁が誠実性の要件をきちんと審査していたか、過去の法令違反やトラブルを見落としていなかったかが争点になりました。
- 裁判所の判断基準
- 裁判所は、誠実性の要件は「申請書や添付書類の記載、それまでに判明した事実から、不正または不誠実な行為を行うおそれがあると疑うに足る明らかな事情が見当たらない限り、許可を与えるのが法の趣旨である」という考え方を示しました。
- 結論
- このケースでは、面積基準を155.1平方メートルとわずかに超えていたものの、それによる実害は確認されず、事業者自身が非を認めて始末書を提出していました。これらの事情から、裁判所は「不正または不誠実な行為をするおそれがあると疑うに足る明らかな事情があったとは認め難い」と判断し、行政庁の許可判断に誤りはなかったとしています。発注者とのトラブルについても、誠実性なしと判断する材料にはされませんでした。
この判例から読み取れるのは、軽微な法令違反が1つあるだけで即・誠実性なしと判断されるわけではないということです。違反の程度、実害の有無、そして事業者がその後どのように対応したか(正直に非を認めたかどうか)が、総合判断の中で重視される傾向にあります。
ただし「グレーゾーン」であることに注意
この判例は、あくまで個別の事案における裁判所の判断です。違反の内容や規模、実害の程度によって結論は変わり得るため、「軽微なら問題ない」と安易に考えるのは危険です。気になる事情がある場合は、申請前に必ず確認することをおすすめします。
誠実性の要件の対象範囲(誰が審査されるのか)
誠実性の要件で最も見落とされやすいのが、「社長(代表者)一人が誠実であれば許可が下りる」わけではないという点です。会社組織で申請する場合、審査の対象は次のように広い範囲に及びます。
個人の場合
- 個人事業主本人
- 令第3条の使用人(支配人など)
法人の場合
- 法人そのもの
- 法人の役員等(業務を執行する社員・取締役・執行役のほか、非常勤役員・相談役・顧問、役職名にかかわらず同等以上の支配力を持つ株主等も含まれます)
- 令第3条の使用人(支店長・営業所長など、常時請負契約を締結する営業所の代表者)
つまり、非常勤の役員や顧問、出資しているだけの株主、各支店の支店長に至るまで、対象者全員が「過去に不正・不誠実な行為を行っていないか」をチェックされます。対象者の中に一人でも要件を満たさない人がいれば、会社として建設業許可を受けることはできません。
まとめ:思い当たる節があれば、申請前に確認を
この記事のポイント
- 誠実性の要件は「請負契約に関して不正や不誠実な行為をするおそれがないこと」を求める、発注者保護のためのルール
- 宅建業や建築士など他業種で、過去5年以内に不正による免許取消を受けていないことが求められる
- 誠実性を直接証明する書面はなく、工事経歴書・契約書・略歴書等から総合的に判断される
- 裁判例では、軽微な違反でも実害がなく誠意ある対応があれば、誠実性なしとは判断されない傾向がある
- 社長だけでなく、非常勤役員・顧問・支店長など幅広い関係者が審査対象になる
誠実性の要件は、「請負契約に関して不正や不誠実な行為をするおそれがないこと」を求める、発注者を守るための重要なルールです。
「新しく迎えた役員が、実は過去に宅建業で免許を取り消されていた」「事業拡大で採用した支店長に問題があった」といった理由で、直前になって建設業許可の手続きがストップしてしまうケースもあります。
役員や使用人を新たに迎えて建設業許可の取得を目指す際は、対象者の経歴をしっかり確認しておくことが欠かせません。「自分の会社は要件を満たせるか不安がある」という方は、ぜひ一度、建設業許可の専門家である行政書士へご相談ください。

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