【大津市】市街化調整区域で分家住宅(提案基準1)を建てる条件を行政書士が解説

市街化調整区域は、都市計画法において「市街化を抑制すべき区域」と定められており、原則として新しい建物を建てることはできません。しかし、その地域に長く暮らす世帯の子や孫などが、結婚などを機に独立して自らの家を建てる場合に限り、例外的に建築が認められる制度があります。これがいわゆる「分家住宅」です。
大津市においては、開発許可・建築許可の「提案基準1(世帯の分化の過程で必要とする住宅について)」にその具体的な要件が定められています。本記事では、大津市の市街化調整区域で分家住宅を建てたいと考えている方向けに、クリアすべき具体的な条件や必要書類を、大津市公表の提案基準1の原文に基づいて解説します。
1. 大津市の「分家住宅(提案基準1)」とは?
大津市の市街化調整区域に10年以上継続して居住している世帯において、通常の分化発展(世帯が分かれること)の過程で必要となる自己用の住宅を指します。
「実家の近くに土地があるから、子供のために家を建ててあげたい」と思っても、市街化調整区域では誰でも自由に建てられるわけではありません。大津市が定める提案基準1のすべての要件を満たし、「ここに建てるのがやむを得ない」と認められた場合のみ、開発許可や建築許可を受けることができます。
2. クリアすべき5つの要件
大津市で提案基準1の許可を得るためには、以下の要件をすべて同時に満たす必要があります。
申請者(だれが建てるのか)
- 申請地周辺の市街化調整区域に10年以上継続して居住している世帯(現に居住している住宅を所有している者)と同居、または同居していた3親等以内の親族(尊属=親や祖父母は除く)およびその配偶者であること
- 他に実家(本家)を継ぐ者がいること
申請地(どこに建てるのか)
- 申請地は、現に居住している者の居住地または実家より直線距離で1km以内であること
- 申請者が所有する土地、または取得することが確実な土地であること
- 他法令の規制により住宅の建築が困難な土地でないこと(農業振興地域の農用地区域や自然公園法による規制など、住宅建築が制限される法令は複数あります。個別の土地がこれに該当するかは大津市への確認が必要です)
他に土地を所有していないこと(資産要件)
- 申請者および申請者の直系血族(卑属=子や孫などは除く)が、市街化区域内に住宅の建築が可能な土地を所有していないこと
「市街化区域に家を建てられる土地があるなら、そちらに建ててください(調整区域にわざわざ建てるやむを得ない事情がない)」という考え方に基づく要件です。
住宅を必要とする具体的な事情(必要性要件)
- 婚姻(事実婚を含む)による別世帯の構成、または転勤等による転入等、新たに自己の居住の用に供する住宅を必要とする事情があること
単に「セカンドハウスが欲しい」「土地があるから建てたい」という理由だけでは認められません。
建築物の用途と規模
- 自己の居住のための一戸建専用住宅であること(アパート、店舗、賃貸用等は不可)
- 敷地面積は150㎡以上であること
- 建築物の高さは10m以下であること
- 建ぺい率は60%以内(大津市建築基準法等施行細則第14条の規定が適用される場合は70%)、容積率は100%以内であること(自然公園法等の適用により、これより低い数値が定められている場合はその数値による)
- 敷地形態が路地状(旗竿地)である場合は、路地状部分の奥行きが20m以内であること
3. 申請に必要な主な書類
提案基準1の申請は、以下のような書類・図面を添付して大津市に提出します。
- 申請理由書(申請人の現状、実家の将来、世帯の分化の必要性、申請地決定の理由等を記述)
- 世帯の分化に係る調書
- 申請地の登記事項証明書または登記簿謄本
- 家族構成および10年以上継続して居住している者との続柄が確認できる図表
- 住民票(家族全員分)
- 申請地を相続等で取得予定の場合はその旨の確約書
- 申請地決定の理由書(10年以上継続して居住している者が所有する土地の位置図を添付し、申請地以外の土地の状況を説明)
- 固定資産評価証明書(10年以上継続して居住している者が所有するすべての土地・建物を記載したもの)
- 位置図(縮尺1/50,000あるいは1/25,000および1/2,500。1/2,500図には実家と申請地の距離を明記)
- 排水経路図、道路・汚水処理施設等の整備計画図
- 建築図面(平面図、立面図等)
4. 実務上の注意ポイント
実家(本家)の適法性を先に確認する
見落としやすいポイント
提案基準1の条文上は明記されていませんが、実務上は「実家(本家)が法的に適法な建物として存在しているか」が事前確認の対象になり得ます。もし実家が、過去に農家住宅として許可を得て建てられたにもかかわらず、現在は農業に従事していない親族が居住しているなど、用途外使用の状態にある場合は、そこから派生する分家住宅の申請に影響が出る可能性があります。分家住宅を検討する際は、まず実家の権利関係や建築の経緯を登記簿や建築確認記録などで確認し、疑義がある場合は早めに大津市または専門家へ相談することをおすすめします。
道路と排水のインフラ整備
申請地周辺の道路や排水施設は、原則として大津市の技術基準に従って整備されている必要があります。特に汚水・雨水の放流先については、水利組合や隣接所有者の同意が必要になるケースが多く、事前の現地調査や調整が欠かせません。
提案基準1は「10年以上の居住実績」「実家から1km以内」「本家を継がないこと」「市街化区域に土地を持っていないこと」など、複数の要件をすべて同時に満たす必要がある、判断の難しい許可類型です。書類の準備や役所との事前協議には専門知識が求められます。
市街化区域担当:077-528-2773/市街化調整区域担当:077-528-2876
まとめ
大津市の市街化調整区域で「分家住宅(提案基準1)」を建てるための道のりは、一般的な市街化区域での新築に比べて複雑です。「10年以上の居住実績」「実家から1km以内」「本家を継がない」「市街化区域に土地がない」といった要件を一つでも欠いていると、原則として許可は下りません。役所との事前相談や多くの添付書類の準備、道路・排水などのインフラ確認まで、クリアすべき実務的ハードルは多岐にわたります。「うちの土地に子供の家は建てられるのか」「実家の適法性に不安がある」という方は、早い段階で開発許可実務に詳しい専門家にご相談ください。
本記事について
本記事は執筆時点(2026年8月)の大津市開発許可基準(提案基準1)に基づき作成しています。基準は改定される場合があるため、具体的な個別案件については、必ず事前に大津市都市計画部開発調整課への確認、または専門家への相談を行ってください。

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