相続した農地を放置していませんか?行政の勧告・増税リスクと「非農地判断」等の解決策

監修 滋賀県 行政書士 田村仁志 (登録番号:第26250869号)

「遠方に住んでいて管理できない」「親が亡くなり、誰が相続するかも決まっていない」といった理由から、使われなくなった農地(耕作放棄地)をそのまま放置してしまうケースが増えています。

しかし、農地法では農地の適切な利用が義務付けられており、長期間放置された農地には行政からの厳しい指導が入り、最終的には自分の意思に関係なく強制的に農地バンクへ貸し出される仕組みが用意されています。

この記事では、耕作放棄地を放置した場合の行政の対応フローや、実務上の「本音(固定資産税のペナルティ等)」、そして放置農地を抱える方がとるべき解決策を行政書士が解説します。

STEP1:毎年の「利用状況調査」と「利用意向調査」

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利用状況調査(毎年実施)

農業委員会は毎年1回、管轄内の農地がどう利用されているかを確認する「利用状況調査」を実施します。この調査で、「現に耕作されておらず、今後も耕作される見込みがない」と判定された農地は「遊休農地」とされます。

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利用意向調査(所有者への確認)

遊休農地と判定された農地については、農業委員会から所有者に対して、今後の利用意向(自分で耕作する、農地バンクに貸す、何もしない等)を確認する「利用意向調査」が行われます。ここでの回答が次のステップの分かれ道になります。

STEP2:「協議の勧告」と固定資産税の増税

利用意向調査に対して「何もしない」と回答したり、期限(6ヶ月)が過ぎても意向が示されなかったりした場合、農業委員会は所有者に対し「農地中間管理機構(農地バンク)と借入れの協議をしなさい」と協議の勧告を行います。

実務上の重要ポイント

「協議の勧告」自体には強制力はありません。しかし実務上、行政はこれを強力な圧力手段として活用しています。

勧告を受けたにもかかわらず農地バンクに貸し付けない場合、ペナルティとしてその農地の固定資産税の評価控除が適用除外となり、翌年度から固定資産税が約1.8倍に増税される措置がとられます。

勧告を放置した場合の固定資産税の変化 通常の農地 1.0倍 評価控除あり 勧告を放置 勧告後(翌年度〜) 約1.8倍 評価控除が適用除外 に増税

勧告の対象外となるケース(例外)

すべての遊休農地が勧告・増税の対象になるわけではなく、以下のような場合は運用上対象外とされます。

  • その農地が「農業振興地域」の外にある場合(多くの農地はこの「農業振興地域外」に該当するため、実際には勧告・増税の対象とならないケースが少なくありません)
  • 農地バンク側から「条件に合わず借りられない」と通知があった場合
  • 所有者が貸付意思を示している場合
  • 既に長年放置され森林化しており、農業委員会が「再生利用が困難(非農地)」と判断した場合

STEP3:都道府県知事の「裁定」による強制的な権利設定

STEP2の勧告から2ヶ月が経過しても農地バンクとの協議がまとまらない場合、農地バンクは都道府県知事に対して「裁定」を申請することができます。

知事が引き続き農業上の利用が見込めないと判断して裁定を下すと、所有者の同意がなくても強制的に「農地中間管理権(賃借権)」が設定され、農地バンクに貸し出されることになります。所有者が行方不明の農地についても、公示等の手続きを経て同様に利用権が設定される仕組みです。

裁定は最終手段

実際の現場では所有者の特定等に時間がかかるため、裁定による強制取得は最終手段として位置づけられ、まずは行政による粘り強い説得が行われるケースが多くなっています。

注意点:周辺に迷惑をかけると「措置命令」のリスクも

農地を放置して雑草や病害虫が発生し、周辺の営農条件に著しい支障が生じている場合、市町村長から「支障の除去等の措置」を命じられることがあり、これに違反すると罰則の対象となるリスクもあります。

行政書士からのアドバイス:放置農地の解決に向けて

農地を放置している理由として、「相続の手続きが終わっていない」「共有名義で話がまとまらない」といった事情を抱えている方が非常に多く見受けられます。しかし、そのまま放置して行政から「勧告」を受けると、固定資産税の負担だけが跳ね上がってしまいます。

そうなる前に、以下のような対策を検討することが重要です。

非農地判断の取得

既に木が生い茂り、農地に戻すのが不可能な状態であれば、農業委員会から「非農地」としての判断を受け、法務局で地目変更登記を行うことで農地法の規制から外れる道があります。

相続未了農地の整理

亡くなった方の名義のままになっている農地について、遺産分割協議書を作成し、真の権利者を確定させることで、売却や農地バンクへの貸出をスムーズに進められます。

「自分たちだけでは所有者の整理が難しい」「非農地として認めてもらえるか分からない」とお悩みの方は、固定資産税が増税される前に、農地手続きや相続に詳しい行政書士などの専門家へご相談されることを強くおすすめします。

まとめ

この記事のポイント
  • 農業委員会は毎年「利用状況調査」を行い、遊休農地に「利用意向調査」を実施します
  • 意向確認に応じないと「協議の勧告」が行われます
  • 勧告を放置すると、固定資産税が翌年度から約1.8倍に増税されます
  • 勧告から2ヶ月経過すると、知事の「裁定」で強制的に農地バンクへ貸し出される場合があります
  • 周辺に被害を与える放置は「措置命令」と罰則のリスクもあります
  • 解決策は「非農地判断の取得」「相続未了農地の整理」が中心です
  • 固定資産税が増税される前に、早めに行政書士へ相談しましょう

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