「500万円未満だから許可不要」はもう危険?無許可業者が直面する3つの現実

監修:建設業許可専門の行政書士
建設業許可申請・経営事項審査を専門に扱う行政書士が、現場の相談実績にもとづいて解説しています。

「うちは500万円未満の工事しか受けないから、建設業許可は必要ない」——そう考えている一人親方さんや小規模事業者さんは少なくありません。

たしかに法律上はその通りです。しかし最近、許可がないことを理由に、銀行の融資が下りなかったり、元請から取引を断られたりするケースが増えています。さらに国も、無許可業者への監督を強める方向で動き出しています。

この記事では、軽微な工事だけを請け負っている方が今知っておくべき「実務の現実」と「国の動き」を、行政書士がわかりやすく解説します。

目次

結論:500万円未満でも、許可なしでは仕事が回らなくなってきている

この記事の結論

建設業法上、1件500万円未満(建築一式工事は1,500万円未満など)の「軽微な工事」だけを請け負うなら、許可は不要です。しかし実務では、銀行・元請・国の3方向から「無許可では仕事がしづらい」という圧力が強まっています。

建設業法の決まりでは、1件の請負代金が500万円未満の工事だけを請け負う場合、建設業許可は不要とされています(建築一式工事は1,500万円未満、または木造住宅で延べ面積150平方メートル未満の場合も同様です)。これは小規模事業者の負担を減らすための仕組みで、今も変わっていません。

ただ、ここで見落としやすいのが「法律上の話と、実際の現場で起きていることは別」という点です。次の章から、無許可のままだと実際にどんな場面で困るのか、具体的に見ていきましょう。

現実1:銀行のローンが「無許可業者」というだけで通らない

個人のお客様から、自宅のリフォーム工事を直接請け負うケースを考えてみてください。

工事代金がまとまった金額になる場合、お客様は銀行などでリフォームローンを組むのが一般的です。ここで近年増えているのが、銀行の審査で「工事を請け負う業者が、建設業許可を持っているか」を確認されるという動きです。

現場でよく聞く声

工事代金は500万円未満で収まっていても、業者が無許可だという理由だけで、お客様のローンが下りない。結果として、その工事自体を受注できなくなってしまう——こうした相談は、決して珍しいものではありません。

つまり「法律上は許可が不要」だとしても、お客様が融資を受けられなければ、工事そのものが成立しないということです。これは法律の問題ではなく、金融機関側の融資基準の問題なので、事業者側でコントロールするのは難しい部分でもあります。

現実2:元請から「許可がなければ取引しない」と言われる

下請として仕事をもらう場合も、状況は同じように厳しくなっています。

大手のゼネコンだけでなく、中堅の元請事業者でも「社内コンプライアンス(法令遵守の体制)」への意識が高まっています。その結果、下請の協力業者に対して、請負金額にかかわらず建設業許可の取得を必須とする会社が増えてきました。

よくある誤解

「うちは500万円未満の工事だから許可は不要」という説明は、法律上は正しくても、元請の社内ルールの前では通用しないことがあります。許可を取らなければ「今後の仕事は回さない」と取引停止を通告されてしまうケースも出てきています。

これは元請側が、自社の取引先全体のコンプライアンスリスクを下げたいという事情からくるものです。あなたの工事の規模が小さくても、「許可を持つ業者だけと付き合う」という会社の方針には、個別に交渉しても変えてもらいにくいのが実情です。

国も動いている:軽微な工事への規制強化の流れ

実務の現場だけでなく、国土交通省も「軽微な工事のみを請け負う無許可業者」への監督を強める方向で検討を進めています。

そもそも軽微な工事が許可不要とされたのは、公共の福祉への影響が小さく、小規模事業者の負担を軽くするための配慮でした。しかし近年、戸建て住宅のリフォーム工事などを中心に、行政のチェックを受けていない無許可業者による施工トラブルや、消費者からの相談が増えています。住宅リフォームの多くは500万円未満で収まるため、今の制度では規制が及びにくいのです。

500万円
未満なら許可不要
(建築一式は1,500万円未満)
平成26年
住宅リフォーム事業者団体
登録制度がスタート
令和5年〜
軽微な工事の実態把握・
管理体制の検討が本格化

こうした状況を受けて、国は軽微な工事のみを請け負う業者に対して、次のような仕組みづくりを検討しています。

検討されている主な内容

  • 無許可業者を対象とした「届出制」や「登録制」の導入
  • 違法行為があった場合に、登録を取り消すなどのペナルティを設ける
  • 住宅リフォーム事業者団体への登録を通じた実態把握の強化

すでに平成26年(2014年)には「住宅リフォーム事業者団体登録制度」が始まっており、令和5年(2023年)からは「建設業の許可を要しない小規模工事について、実態把握や適切な管理のための枠組みづくり」の検討が本格的に始まっています。「無許可のままなら誰の干渉も受けない」という状況は、今後変わっていく可能性が高いと考えられます。

よくある質問

500万円未満の工事しかしないなら、本当に許可は不要ですか?

法律上は不要です。ただし、ここまで紹介したように、銀行の融資審査や元請の取引条件など、実務上は許可がないと仕事を受けられない場面が増えています。法律の原則と、実際にビジネスが回るかどうかは別問題として考える必要があります。

許可を取るには、どのくらい時間がかかりますか?

申請先や時期によって差はありますが、一般的には申請から許可が下りるまで1〜2か月程度かかります。書類の準備期間も含めると、思っているより時間がかかることが多いので、取引先から急に求められてから準備を始めると、間に合わないおそれがあります。

一人親方でも建設業許可は取れますか?

取得可能です。経営業務の管理体制、専任技術者の配置、財産的基礎などの要件を満たせば、個人事業主でも法人と同じように許可を受けられます。実務経験の証明方法など、個人事業主ならではの注意点もあるため、早めに準備状況を確認しておくと安心です。

まとめ:許可を取るなら、早いほうがいい

この記事のポイント

  • 500万円未満の工事だけなら、建設業法上は許可不要(建築一式は1,500万円未満)
  • ただし銀行の融資審査では、業者が無許可だと融資が通らないことがある
  • 元請のコンプライアンス強化で、許可がないと取引を断られるケースが増えている
  • 国も無許可業者への届出制・登録制の導入を検討中で、今後規制が強まる可能性が高い
  • 許可取得には申請から1〜2か月程度かかるため、必要になってから動くと手遅れになりやすい

金融機関の融資審査、元請のコンプライアンス対応、そして国による規制強化の検討。この3つの動きはどれも、「建設業許可を持たない業者は、信用力が低くリスクが高い」と評価される方向に進んでいます。

今は500万円未満の仕事で経営が回っていても、ある日突然、取引先から「許可番号を教えてほしい」と求められることがあります。慌てて準備を始めても、許可が下りるまでには数ヶ月かかるため、その間に大切な仕事を失ってしまうかもしれません。

「自分は許可の要件を満たせるのか不安」「書類を集める時間がない」という方は、規制が厳しくなる前に、そして大切な取引先を失う前に、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

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