個人事業主から法人成りした場合の建設業許可|引継ぎの手続きと注意点

結論:法人成り時の建設業許可は「引継ぎ」できるが要件がある

個人事業主として建設業許可を取得している方が法人成りする場合、個人の許可は法人にそのまま引き継がれません。原則として、個人の許可を廃業し、法人として新規に許可を取り直す必要があります。

ただし一定の要件を満たせば「法人成り特例」として許可番号や経営事項審査の実績を引き継ぐ取扱いが認められています。要件を知らずに進めてしまうと、これまでの実績がリセットされてしまうため注意が必要です。

この記事の結論
法人成りでも許可番号は引き継げます。ただし「5つの要件」と「タイミング」がカギです。
①新設法人 ②個人許可が有効 ③営業の同一性 ④財産的基礎 ⑤第1期確定申告前に申請。このすべてを満たして初めて、許可番号と経審の実績を引き継げます。
「既存の法人」への組織変更は対象外
法人成り特例の対象は新規に設立した法人のみです。すでに別の法人を持っている場合や、既存法人に事業を移す場合は引継ぎが認められません。

そもそも個人と法人の許可は「別物」

建設業許可は事業主に対して与えられるものです。個人事業主と法人は法律上まったく別の事業者として扱われるため、個人で取得した許可が法人にそのまま使えるわけではありません。

そのため、何も手続きをせずに法人成りすると、個人時代の許可番号は廃業届とともに消えて、法人で新規に申請し直すことになります。新規申請の場合、それまでの経営経験や経審の実績は別物として扱われるため、入札参加資格などにも影響が出ます。

何もしない場合法人成り特例を使う場合
許可番号 新しい番号に変わる そのまま引継ぎ可能
経審の実績 リセット 引継ぎ可能(再申請要)
個人時代の信用 表向きはゼロから 引継ぎが取引先に説明しやすい
申請手数料 新規90,000円 新規90,000円(同額)

法人成り特例を使うための5つの要件

個人事業主から法人へ組織変更(法人成)する場合、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります(滋賀県マニュアル準拠)。

①
許可を受けていた個人が新規に設立した法人であること
既設法人への組織変更は認められません

引継ぎが認められるのは、許可を持っていた個人事業主が新たに設立した法人に限られます。すでに存在する別法人や、家族・知人が代表の法人に事業を移すケースは対象外です。

②
許可申請時点において個人の許可が有効であること
許可切れや先に廃業届を出してしまうとNG

法人としての新規許可申請を行う時点で、個人の建設業許可がまだ有効である必要があります。許可期間が切れていたり、先に個人の廃業届を出してしまっていると引継ぎは認められません。

個人の許可廃業届と法人の新規申請は同時提出するのが基本です。タイミングを間違えると、せっかくの要件充足が無駄になります。

③
営業の同一性があること
3つの細目要件をすべて満たす必要

個人事業と法人が「実質的に同じ事業」であることを示すために、以下の3つを満たす必要があります。

項目内容
(1)資産・負債の引継ぎ 建設業に係る資産・負債(完成工事未収入金、未成工事支出金、材料貯蔵品、工事未払金、未成工事受入金)が個人から法人に引き継がれていること
(2)代表者・主要株主 新設法人の代表者および主要株主(発行済み株式の過半数)が、前事業主または前事業主の親族であること
(3)経管の引継ぎ 個人時代の経営業務の管理責任者(支配人含む)が、引き続き法人の経営業務の管理責任者に就任すること
④
新規許可申請の財産的基礎の要件を満たすこと
法人としての開始貸借対照表で自己資本500万円以上

一般建設業の場合、自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力を示す必要があります。法人成り直後は決算が来ていないため、法人設立時の開始貸借対照表で要件を満たす形を作るのが一般的です。

個人事業時代の資産を出資(現物出資・金銭出資)して法人を立ち上げる場合は、資本金や開始時の純資産を500万円以上にしておくと安心です。

⑤
新設法人が第1期の確定申告を行うまでに許可申請を行うこと
タイミングを逃すと特例は使えなくなる

引継ぎを認めてもらうには、新設法人の第1期決算(確定申告)を迎える前に新規許可申請を行う必要があります。タイミングを逃すと特例の対象外となり、通常の新規申請扱いになります。

多くの場合、法人設立から最初の決算までは約1年。書類準備の期間も考えると、法人設立後すぐに申請準備に着手するのが安全です。

通常の許可要件もすべて満たす必要があります
法人成り特例は「新規申請の中での特別扱い」であり、申請自体は新規許可申請です。経営業務管理・営業所技術者・社会保険・誠実性・財産的基礎の許可5要件はすべて法人として満たす必要があります。

法人成り許可申請に必要な書類

通常の新規許可申請書類に加えて、または記載方法が異なる書類があります。主なものは以下のとおりです。

様式番号書類名備考
第2号 工事経歴書 個人最終決算に基づいて作成
第3号 直前3年の各事業年度における工事施工金額 個人最終決算に基づいて作成
第7号 常勤役員等(経営業務の管理責任者)証明書 証明者欄は個人の自己証明で可
第18号 【個人】貸借対照表 個人最終決算に基づいて作成
第19号 【個人】損益計算書 個人最終決算に基づいて作成
第15号 【法人】貸借対照表 開始貸借対照表を作成
第16号 【法人】損益計算書・完成工事原価報告書 商号のみ記入
第17号 【法人】株主資本等変動計算書 -
第17号の2 【法人】注記表 該当箇所の予定を記入
第20号 営業の沿革 個人の沿革も記入
添付書類 法人設立届出書(写し) 税務署提出分
常勤性確認 社会保険の写し 健康保険・厚生年金資格取得確認通知書、標準報酬決定通知書など
※令和7年12月以降、従来の健康保険証カードのコピーは不可
第22号の4 廃業届 個人の許可全部廃業届

法人成り+許可引継ぎの進め方(4ステップ)

①
法人設立準備と並行して許可要件を確認
設立してから問題が判明すると致命的

法人を設立する前に、法人として5要件をすべて満たせるかを確認します。特に注意が必要なのは以下の点です。

確認項目チェックポイント
経営業務管理 個人時代の経管が法人の代表取締役(または常勤役員)に就任予定か
営業所技術者 営業所技術者(旧・専任技術者)が法人の常勤として雇用される形になっているか
社会保険 法人として健康保険・厚生年金・雇用保険に加入する準備があるか
財産的基礎 法人の資本金・開始貸借対照表で自己資本500万円以上を確保できるか
②
法人を設立し、社会保険加入手続きを完了
許可申請には社会保険加入が必須

定款作成・登記申請・法人設立を進めます。設立後は速やかに税務署への法人設立届出、年金事務所での社会保険適用事業所の手続き、ハローワークでの雇用保険手続きを完了させます。

社会保険の加入は許可要件であると同時に、申請時の常勤確認書類としても必要です。法人設立後すぐに動くのが鉄則です。

③
個人廃業届と法人新規申請を同時提出
タイミングのズレは引継ぎ失敗の原因に

個人事業の廃業届(様式第22号の4)と、法人としての新規許可申請を同じタイミングで提出します。個人の廃業届を先に出してしまうと「許可申請時点で個人の許可が有効」という要件②を満たせなくなるため要注意です。

滋賀県知事許可の場合、申請から許可までは標準処理期間で約30日。書類準備期間も含めると、法人設立から許可取得まで2〜3か月程度を見ておくと安心です。

④
入札参加資格の承継手続き
経審を受けている場合は再申請が必要

個人事業時代に経営事項審査(経審)を受けていた場合は、法人設立時点を審査基準日として再申請する必要があります。引き続き公共工事の入札を希望される方は忘れずに対応してください。

滋賀県の入札参加資格については、滋賀県監理課審査契約係(TEL:077-528-4116)へ承継手続きについてお問い合わせください。市町への入札参加資格は、各発注機関ごとに別途承継手続きが必要です。

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よくある失敗パターンと注意点

失敗例①:先に個人の廃業届を出してしまった
「もう法人にしたから」と先に個人の廃業届を出すと、要件②(許可申請時点で個人の許可が有効)を満たせず、特例が使えなくなります。必ず法人の新規申請と同時提出してください。
失敗例②:第1期決算を迎えてから申請した
「忙しくて後回しに…」と第1期の確定申告まで申請を放置すると、特例は使えなくなり、ただの新規申請として扱われます。許可番号・経審実績ともにリセットされてしまいます。
失敗例③:資本金を低く設定してしまった
法人設立時に資本金を100万円などに設定すると、財産的基礎の500万円要件を満たせない可能性があります。設立前に資本構成のシミュレーションが必要です。
事業譲渡認可(法第17条の2)という別の選択肢もあります
法人成り特例とは別に、個人と法人が事業譲渡契約を結ぶことで、事前の認可申請により許可を「無空白」で承継する方法もあります。事業譲渡の効力が発生する前に申請して認可を受ける必要があり、事後申請では認められません。要件・提出書類が大幅に異なるため、詳細は別冊の認可申請マニュアルをご確認いただくか、行政書士にご相談ください。

まとめ:法人成りでも許可番号は引継ぎ可能

まとめ
法人成りでも許可番号は引継ぎ可能です。ただし「要件+タイミング」が命です。
チェックリスト
  • 個人と法人の許可は別物。何もしなければ許可番号も経審実績もリセットされる
  • 法人成り特例の5要件は①新設法人 ②個人許可が有効 ③営業の同一性 ④財産的基礎 ⑤第1期決算前に申請
  • 営業の同一性は資産・負債の引継ぎ、代表者・主要株主の関係、経管の継続の3つすべて必要
  • 個人の廃業届は法人の新規申請と同時提出。先に出してはいけない
  • 経審を受けている場合は法人設立時点を基準日として再申請が必要
  • 滋賀県・市町の入札参加資格も別途承継手続きが必要
  • 法人設立から許可取得まで2〜3か月程度。設立準備と並行して許可要件のチェックを進めるのが安全
この記事は滋賀県土木交通部監理課「建設業法のあらましと建設業許可申請マニュアル(令和7年11月改訂)」および「建設業許可申請の手引き」に基づき作成しています。要件の詳細は変更される場合があります。最新情報は滋賀県監理課(077-528-4114)にご確認ください。

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